はじめに
新港信号場は、京葉線稲毛海岸~千葉みなと間にある信号場です。下り線のみに待避線が設置され、ときおり貨物列車や回送列車の退避に使用されているようですが、2026年3月ダイヤ改正で待避線が使用停止となるという情報があります。
本記事では、なぜこの場所に待避線が設置されることになったのか、またどうして不要設備になってしまったのかについて考えていきます。
新港信号場は、京葉線稲毛海岸~千葉みなと間にある信号場です。下り線のみに待避線が設置され、ときおり貨物列車や回送列車の退避に使用されているようですが、2026年3月ダイヤ改正で待避線が使用停止となるという情報があります。
本記事では、なぜこの場所に待避線が設置されることになったのか、またどうして不要設備になってしまったのかについて考えていきます。
現在の京葉線は東京駅と蘇我駅を結ぶ通勤路線となっていますが、もともとは鶴見駅・川崎貨物駅から木更津・富津まで東京湾を半周する貨物線として計画されました。この長大な貨物線のうち新木場~蘇我間で建設されていた線路と新規建設した東京~新木場間をあわせたのが現在の京葉線です。京葉線の建設経緯については別記事もあわせてご覧ください。
モータリゼーションによる鉄道貨物輸送量の急減と、沿線が工業地帯ではなく住宅地・商業地として開発されたことなどを受け、京葉線は旅客専用線として開業しました。ただし、千葉貨物ターミナル(現在の新港信号場付近にあった貨物駅)~蘇我間のみ、千葉貨物ターミナル駅を発着する貨物列車が運転されていました。千葉貨物ターミナル駅を発着する貨物列車は総武本線・新金線経由で運転されており、蘇我駅・新小岩操駅(現新小岩信号場駅)の2駅で方向転換が必要なため所要時間が長く運行の手間も大きいという問題がありました。千葉貨物ターミナル駅自体の貨物取扱量の減少も止まらず、1996年に京葉臨海鉄道村田駅(現千葉貨物駅)に役割を譲る形で休止となってしまいました。
一方、千葉貨物駅発着の貨物列車であっても新金線経由で運転するために新小岩操駅で方向転換が必要なことには変わらず、輸送改善のために京葉線西船橋~南船橋~蘇我間に貨物列車を運行する計画が持ち上がりました。この「武蔵野線・京葉線の貨物走行対応化事業」は政府の補助金を受ける関係で京葉臨海鉄道を整備主体として実施され、2000年12月に京葉線の貨物列車運行が再開されました。
「武蔵野線・京葉線の貨物走行対応化事業」の工事内容について、京葉臨海鉄道の社史に次のように記載があります。
- 待避線新設(稲毛海岸駅~千葉みなと駅)
- 待避線延長(西船橋駅)
- 信号・運行設備改良
- 環境対策など
『35年のあゆみ』京葉臨海鉄道
1つ目の「待避線新設」が新港信号場の新設にあたります。蘇我駅の配線の関係上、京葉線の下り貨物列車は上り旅客列車と平面交差するため、旅客列車の運行への支障を最小化するために下り貨物列車のみの待避線が蘇我駅手前に設置されたものと思われます。場所としては千葉貨物ターミナル駅の跡地を再利用し、旧上り本線を下り待避線に、千葉貨物ターミナル駅から稲毛海岸方面へ向かう線路のために路盤のみ建設されていた高架橋を上り本線に転用する形となりました。
なお、西船橋駅でも待避線が延長されました。同駅は三角線の一端に位置することから線路の分岐・合流地点での時間調整に便利なように貨物列車の有効長に対応した着発線が整備されたものと思われます。同駅では分岐器がホームから離れた位置へ移設され、有効長が大きく延伸されました。
新港信号場の開業から25年以上が経過し、状況は大きく変化しました。
京葉線の定期貨物列車は2002年時点でコンテナ貨物列車3.5往復、石油貨物列車6.5往復が運転されていましたが、京葉線の貨物列車運行開始後も輸送量の減少は止まらず、2025年3月ダイヤ改正ではコンテナ貨物列車2.5往復、石油貨物列車2往復まで減少しています(ただし、石油列車については運転頻度の高い臨時列車がいくつか設定されているのでこの数字ほどには減っていないようです)。かつて貨物時刻表に添付されていたダイヤグラムを参照しても、新港信号場での停車時間が表示されている貨物列車は2009年のダイヤ改正で消滅しており、ダイヤグラムに載らない短時間の停車を除けば回送列車やダイヤ乱れ時の使用に限定されてしまっていたことになります。
一方、京葉線の旅客列車も減少しています。それぞれ毎時0.5~1本運転されていた特急「さざなみ」「わかしお」は高速バスとの激しい競合に押され、「さざなみ」は朝夕のみの運転、「わかしお」も3時間程度運転されない時間帯があります。各駅停車・快速も海浜幕張以東で減便が続き、あわせて毎時4本のみの運転となってしまいました。日中時間帯の海浜幕張~蘇我間の旅客列車は、毎時7~8本程度から毎時4~5本にまで減ってしまったことになります。このように、新港信号場の付近では旅客列車・貨物列車ともに大きく減便され、新港信号場の役割は年々薄れていたといえます。
情報通りに新港信号場がダイヤ改正で使用停止された場合、今後撤去されてしまうのでしょうか。前述のとおり新港信号場の設置には公金が投入されており、廃止・撤去するには政府や保有主体である京葉臨海鉄道との調整が必要になる可能性があります。また、仮に撤去する場合でも本線部分の分岐器だけであれば大きな費用が掛からない可能性がありますが、待避線が設置されている高架橋を撤去するのには多額の費用がかかると思われ、しばらくは廃止設備のまま残存する可能性があります。
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