【親子駅】構内に別の駅がある駅

【親子駅】構内に別の駅がある駅

はじめに

構内の広い駅で、ある駅の構内に別な駅が存在している例があります。本記事ではそのような駅を「親子駅」と呼び、いくつか事例を紹介していきます。

その前に、まずは「構内」の定義を明示しておきます。駅など停車場の内外の境界は、法令で場内信号機の位置または停車場区域標の位置と定められています。

Ⅹ-6 第97条(停車場の境界)関係

1 停車場内外の境界は、次の方法により線路ごとに示すこと。

  1. (1) 複線区間にある停車場における当該停車場に列車を進入させる線路又は単線区間にある停車場の線路の場合 最外方の場内信号機(新幹線においては地上信号機)若しくは場内標識又は停車場の区域を示す標
  2. (2) 複線区間にある停車場における当該停車場から列車を進出させる線路の場合 停車場の区域を示す標(新幹線(超電導磁気浮上式鉄道を除く。)においては最外方の停止限界標識)

2 1にかかわらず、複線区間にある停車場にあっては、列車の運転に支障を及ぼすおそれのない場合は、1(1)の場内信号機若しくは場内標識又は停車場の区域を示す標の位置を基準として、当該停車場の2以上の線路における境界とすることができる。

鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準

すなわち、停車場区域標がない場合は場内信号機の内方に別な駅のホームがあるのが「親子駅」ということになります。

なお、金沢貨物ターミナル駅と東金沢駅、鳥栖駅と鳥栖貨物ターミナル駅のように運転上同一の駅が旅客駅と貨物駅とで別の名前になっているに過ぎない場合は「親子駅」から除外します。また、後述する西千葉駅のような例も本記事では取り扱わないこととします。

東室蘭駅・鷲別駅

室蘭本線東室蘭駅には貨物ホームと着発線が併設されており、その先に鷲別駅ホームがあります。この鷲別駅ホームは東室蘭駅下り場内信号機の内方にあります。鷲別駅ホームの先端から貨物着発線へ分岐する分岐器の距離がないこと、カーブで見通しが悪いこと等が関係していると推察します。

室蘭本線配線略図(抜粋)
室蘭本線配線略図(抜粋)

※2025年1月25日追加

千葉駅・東千葉駅(配線改良前)

首都圏にある親子駅の代表的な例が千葉駅と東千葉駅でした。千葉駅東方の総武本線線路脇には同駅構内の留置線があり、この横に東千葉駅のホームがありました。留置線は千葉駅方面の線路と都賀駅方面の線路双方につながっており、そのため千葉駅の場内信号機は東千葉駅の都賀方にありました。東千葉駅は千葉駅構内だったわけです。このようになっていた理由は、東千葉駅が1963年の移転前の千葉駅の位置であることに関係があるものとみられます。

総武本線配線略図(2013年8月現在・抜粋)
総武本線配線略図(2013年8月現在・抜粋)

しかし、遅くとも2020年には留置線から都賀方面への線路が撤去され、これに伴い千葉駅の場内信号機は東千葉駅ホームの千葉寄りに移設されました。このため千葉駅・東千葉駅は「親子駅」の定義から外れました。

総武本線配線略図(2022年9月現在・抜粋)
総武本線配線略図(2022年9月現在・抜粋)

なお、西千葉駅も快速線の千葉駅構内の線路のすぐ横にホームがありますが、この部分の緩行線線路は千葉駅構内ではないと思われること、このような例を含めてしまうと数が多くなりすぎることから今回は「親子駅」として扱わないことにします。

扇町駅・昭和駅

昭和駅ホームの手前に扇町駅の電車線の場内信号機があり、昭和駅ホームは扇町駅構内にあることになります。昭和駅ホームの扇町方にも第二場内信号機がありますが、手前にも設置されているのはカーブで見通しが悪いためでしょうか。

鶴見線配線略図(抜粋)
鶴見線配線略図(抜粋)

※2025年1月25日追加

安善駅・武蔵白石駅

鶴見線浅野~武蔵白石間は複線の電車線に加え単線の貨物線が併設されていますが、武蔵白石駅浜川崎方にある単線の貨物線が複線の電車線に合流する分岐器(正確には、更にその先の田辺新田可動橋付近)までが安善駅構内となっています。このため、安善駅と武蔵白石駅が親子駅の関係にあります。かつて大川支線にも武蔵白石駅のホームがあった時代は、そのホーム周辺も安善駅構内だったようです。

鶴見線配線略図(抜粋)
鶴見線配線略図(抜粋)

※2025年1月25日追加

新潟駅・上所駅(2025年3月開業予定)

越後線のうち新潟駅付近の複線区間は運転上新潟駅構内となっており、この複線区間に2025年3月に「上所駅」が開業します。このため、新潟駅と上所駅は親子駅の関係になることになります。下記の配線略図は上所駅開業前のものです。

越後線配線略図(2024年3月現在・抜粋)
越後線配線略図(2024年3月現在・抜粋)

大和八木駅・八木西口駅

近鉄大阪線から橿原線橿原神宮前方面へ結ぶ連絡線(通称八木連絡線)の線路を通る列車は、大阪線大和八木駅ホーム手前で第一場内信号機、ついで八木西口駅ホーム手前で第二場内信号機を通過します。このため両駅は運転上同一駅の構内であることになります。

ただ、大和八木駅と八木西口駅のどちらが「親駅」でどちらが「子駅」かというのは難しい問題です。むしろ、「兄弟駅」と言った方がよいかもしれません。

近畿日本鉄道橿原線配線略図(抜粋)
近畿日本鉄道橿原線配線略図(抜粋)

※2025年1月26日追加

小倉駅・西小倉駅

小倉駅の日豊本線線路の場内信号機は、小倉総合車両センターへの引込線の分岐器の手前にあります。このため、西小倉駅は小倉駅構内にあることになります。こちらも千葉駅同様、西小倉駅が1958年移転前の小倉駅の位置にあることに関連しているとみられます。

日豊本線配線略図(抜粋)
日豊本線配線略図(抜粋)
日豊本線配線略図(抜粋)
日豊本線配線略図(抜粋)

鳥栖駅・田代駅

鳥栖駅は運転上鳥栖貨物ターミナル駅と同一駅である関係上構内が広くなっており、このため鳥栖駅の下り場内信号機は田代駅ホームの手前にあります。

鹿児島本線配線略図(抜粋)
鹿児島本線配線略図(抜粋)

田川伊田駅・上伊田駅

平成筑豊鉄道田川線の田川伊田駅の場内信号機は、上伊田駅ホームの手前にあります。このため、田川伊田駅と上伊田駅が親子駅の関係になります。この付近ではもともと行橋~伊田~後藤寺~添田間の「田川線」と採銅所方面~香春~大任~添田~彦山方面を結んでいた「添田線」があり、両線が駅でもなんでもないところで立体交差していた箇所に後から連絡線が建設され、現在の「日田彦山線」ができたという経緯があります(添田線香春~大任~添田間は1985年に廃止、添田以南も日田彦山線に編入されたのち2023年にBRT化)。このため、田川伊田駅の場内信号機は駅本屋から遠く離れた日田彦山線と田川線の分岐器付近にあります。2001年に上伊田駅が開業した際、同駅のホームがこの田川伊田駅の場内信号機内方に設けられたことから同駅は「親子駅」となりました。

平成筑豊鉄道田川線配線略図(抜粋)
平成筑豊鉄道田川線配線略図(抜粋)

上記のほか、駅間の短い地下鉄では場内信号機(場内標識)の位置が隣駅になっている例が多くあるようです。これについては数が多そうなので別途調査を行いたいと思います。地下鉄以外のJR・私鉄でこのような事例が他にもありましたら、記事に追加しますので是非お知らせください。

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