ディーゼル機関車を1両も使わずにDE10形を置き換えた北長野駅

ディーゼル機関車を1両も使わずにDE10形を置き換えた北長野駅

はじめに

JRの誕生から36年が経過し、旧国鉄時代に製造された車両はJR各社で淘汰が完了しつつあります。なかでもJR貨物の入換・支線用ディーゼル機関車であるDE10形・DE11形は最終製造から約45年が経過しており、取替が急務となりました。後継機として2010年に入換用のHD300形ハイブリッド機関車、2017年には支線・入換用のDD200形ディーゼル機関車が登場し、JR貨物のDE10・DE11形は臨時列車などを除き原則として運用を離脱しました。

ところで、DE10・DE11形の両数とそれを置き換えたHD300・DD200形などの両数を比較すると、後者の方がはるかに少ないということに気づきます。

2003年時点2023年時点
形式両数形式両数
DE10129DE1013
DE114DE115
HD30041
DD20026
DB5004
合計133合計89

2003年時点で支線・入換用の機関車は133両いましたが、2023年時点では89両に減少しています。車両数が44両減少していることになります。

もちろん、運用の効率化や支線区の貨物輸送廃止(信越本線焼島支線、北陸本線敦賀港支線など)、貨物駅の廃止(梅田駅、吉原駅)などの影響もあるのですが、貨物駅の構内配線を工夫し、ディーゼル機関車による入換を不要とした駅が増加している影響も見逃せません。本記事ではこのようなディーゼル機関車による入換作業を省略するための配線上の工夫をご紹介します。

着発線荷役方式(E&S方式)の駅

「荷役」とは、貨物の輸送機器(ここでは鉄道貨車)に貨物を積み下ろしすることです。伝統的な鉄道貨物輸送では、貨物ホームに横付けされた有蓋車などの貨車に直接貨物を積み下ろししていました。当然、荷役のためにはある程度の時間、貨物ホームに貨車を留置しておく必要があります。

また、貨物列車も現在のような拠点間直行輸送ではなく操車場と操車場の間を速達運転する「普通貨物列車」と操車場間の各駅に停車して貨車を集配する「解結貨物列車」による輸送が行われていました。貨物ホームで貨物を積載した貨車はやってきた普通貨物列車に連結されて操車場に向かい、複数の操車場を経由して目的地に到達することになります。

そのようになると、列車が発着する着発線のほかに貨物の荷役線を設置し、解結貨物列車が発着するごとに入換作業を行って貨車を荷役線に据え付けたり、荷役の終わった貨車を列車に連結したりするのが効率的です。実際、1970年代までに建設された貨物駅の大半はこのような配線となっており、現在も多数の事例が残っています。

奥羽本線配線略図(抜粋)
奥羽本線配線略図(抜粋)
山陽本線配線略図(抜粋)
山陽本線配線略図(抜粋)

一方、1960年代から開始された鉄道コンテナ輸送では、貨車の荷役作業はフォークリフトでコンテナを積み下ろしするだけとなり荷役時間が大幅に短縮されました。また、1984年に全国の操車場が廃止され貨物列車は拠点間直行輸送に移行することとなりました。そうすると、主要幹線の途中駅では、着発線に停車したコンテナ列車に対していちいち荷役線との間の入換作業を行うよりも、着発線でコンテナの荷役を行うほうが素早く効率的に荷役作業を終えられるということになります。

着発線荷役方式は国鉄末期の1986年11月に開業した岐阜貨物ターミナル駅ではじめて導入され、1日9本のコンテナ列車で着発線荷役が行われました。架線下での荷役となるためフォークリフトを改造する必要があるなどの面倒な点もありますが、停車時間の短縮と入換作業の削減の効果は絶大でありJR化後は既存の貨物駅を着発線荷役に対応した配線に改良する工事も積極的に行われています。

東海道本線配線略図(抜粋)
東海道本線配線略図(抜粋)

2023年時点では全国31の貨物駅が着発線荷役に対応しています。途中駅だけではなく釧路貨物駅、百済貨物ターミナル駅、安治川口駅、高松貨物ターミナル駅といった終着駅でも着発線荷役に対応した駅があり、これらの駅では当然ディーゼル機関車による入換作業が不要ないし大幅に削減されていることになります。

荷役線までの線路を電化する方法

入換作業が必要な駅でも、ディーゼル機関車ではなく貨物列車を牽引してきた電気機関車をそのまま入換に使用できるよう工夫した例があります。代表例がしなの鉄道北しなの線の北長野駅です(2023年現在、一部線路撤去を伴う配線変更が発生しており、下記の配線略図は最新ではありません)。

しなの鉄道北しなの線配線略図(抜粋)
しなの鉄道北しなの線配線略図(抜粋)

同駅では荷役線や留置線が全て非電化だったため、貨物列車を牽引してきた電気機関車とは別に塩尻機関区篠ノ井派出(2014年以降は新鶴見機関区川崎派出)のDE10形が入換作業を行っていました。しかし、2016年頃に着発線から荷役線のコンテナホーム直前までの間が電化され、電気機関車がコンテナ車を荷役線に押し込むことができるようになりました。コンテナホーム部分は非電化のままなので、コンテナの積み下ろしに架線が邪魔になることもありません。

北長野駅の配線改良に伴いディーゼル機関車が北長野駅に乗り入れることはなくなり、長野県内のディーゼル機関車の北限は南松本駅となりました。なお、構内配線が複雑な南松本駅では2023年現在でも引き続きHD300形を使用した入換作業が行われています。

同様に荷役線に通じる線路を電化してディーゼル機関車による入換作業を廃止した駅には、信越本線黒井駅などがあります。

信越本線配線略図(抜粋)
信越本線配線略図(抜粋)

また、2015年に米子駅から貨物取扱いを移管した伯耆大山駅でも荷役線手前までの線路が電化されています。米子駅で貨物取扱いを行っていた当時はDE10形による入換作業が行なわれていましたが、伯耆大山駅では電気機関車が入換作業にあたっています(非電化の線路が残っている専用線構内の入換は日本通運の入換動車が行います)。

山陰本線配線略図(抜粋)
山陰本線配線略図(抜粋)

サイト中に誤りを発見された方は、誤り報告フォームでお知らせください。ただし、すぐに対応できない場合があります。

お役に立ちましたらシェアしてください!

新着情報

  • 全て
  • JR
  • 私鉄
  • 地下鉄
  • 特集

アクセスランキング [2023年11月]

特集記事一覧
公開日
閉じる
閉じる