はじめに
2026年2月13日、成田空港線(成田スカイアクセス)の輸送力増強等に向けて京成電鉄が衝撃の発表をしました。既に検討が行われている成田湯川~成田空港間の単線区間の複線化にくわえ、北総線と線路を共用している新鎌ヶ谷~印旛日本医大間の複々線化の検討に着手するとのことです。
わが国の国際競争力向上等に必要な国家プロジェクトと位置付けられている成田空港の機能強化に対応し、将来にわたる訪日外国人の増加等、中長期的な需要増加に的確に対応するため、成田スカイアクセスの抜本的な輸送力増強およびサービス向上策について検討しております。
この度、輸送需要が拡大基調にある北総線沿線地域に対する輸送サービスを確保しつつ、増加する空港需要に応えるためには、成田空港周辺(成田湯川駅~成田空港駅)の単線区間の複線化に合わせ、スカイライナー及び新型有料特急専用の新線(複々線)を整備し、線路容量を拡大することが必要との判断に至り、その検討に着手いたしました。
この複線化および新線整備(複々線化)計画は、訪日外国人の増加に伴うオーバーツーリズムの影響を受けるスカイライナーやアクセス特急等の混雑緩和にも資する施策であり、このような観点からもその実現に努めてまいります。
京成電鉄プレスリリース
いったいどのような計画になるのでしょうか?
成田空港・千葉ニュータウンへのアクセス鉄道の経緯
成田空港や千葉ニュータウンへのアクセス鉄道については、過去の様々な計画が二転三転しており、中途半端に建設された未成構造物を新たな計画で活用した結果、現在のような形態となっています。
成田空港へのアクセス鉄道としては、京成電鉄(現在の東成田線)と成田新幹線が計画されていました。しかし、このうち成田空港の開業にあわせて開通にこぎつけたのは京成東成田線のみで、成田新幹線は騒音への懸念から沿線で大反対運動が沸き起こり、大半の区間で着工のめどすら立たない状態でした。国鉄改革に伴い正式に建設が中止された後、成田空港付近で新幹線用に建設された複線分の切り通しとトンネル構造物は使われないまま放置され、のちに京成・JRが単線並列で空港ターミナルビルに乗り入れるのに使用されました。このため、現在まで両社の成田空港乗り入れ線路は単線のままで、増発やスピードアップの障害となっています。
千葉ニュータウンへのアクセス鉄道としては、途中駅「千葉ニュータウン駅」が設けられる予定だった成田新幹線のほか、都市交通審議会答申第15号(1972年)にて下記の2路線が計画されていました。
- 1号線:西馬込・品川―泉岳寺―三田―新橋―浅草橋―浅草―押上―青砥―高砂―鎌ヶ谷北部―千葉ニュータウン小室地区
- 10号線:橋本―多摩ニュータウン中央―調布―蘆花公園―新宿―市ヶ谷―神保町―住吉町―東大島―本八幡―鎌ヶ谷市北部―千葉ニュータウン小室地区―同印旛地区
前者は現在の都営浅草線、京成押上線、北総鉄道北総線(京成高砂~小室間)に相当するルートとなります。この時点で北総線は小室止まりの計画でしたが、10号線の建設遅れのため小室~印旛間も北総線として建設され現在に至ります。10号線は現在の京王多摩線、都営新宿線と本八幡~印旛間に建設される予定だった千葉県営鉄道北千葉線からなります。千葉県営鉄道も建設に向けて一部の用地確保が進められていたものの、北総線の赤字が続いていたこと、千葉ニュータウンの居住者が想定人口に届かなかったこと等からアクセス鉄道を2路線も建設することの是非が議論となり、残念ながら実現せずに終わりました。このような経緯から、新鎌ヶ谷~小室間では北総線と千葉県営鉄道あわせて複々線分の用地が確保され、また小室駅東方~印旛日本医大間でも千葉県営鉄道と成田新幹線のために複々線分の用地が確保され、現在はここに複線の北総線・成田スカイアクセス線のみが敷設されています。
今回、この複々線分の用地を利用して、スカイライナー・新型有料特急向けの線路を新設し北総線・成田スカイアクセス線を複々線化する構想が持ち上がりました。
複々線化に必要な用地はあるのか?
上記のように北総線沿線には複々線分の鉄道用地が確保されているのですが、これはもともと成田新幹線や千葉県営鉄道の敷設のために確保された用地です。ここでは改めて北総線の複々線化に必要な用地が確保されているのかについて検証していきます。
まず、新鎌ヶ谷駅付近です。駅周辺で急速に宅地開発が進行しており、北総線を線増するには民有地の買収を避けられません。工期短縮・事業費削減のため、複々線の起点は新鎌ヶ谷駅ではなく東方の駐車場付近や、あるいは西白井駅とするのも一案です。
新鎌ヶ谷駅付近の鉄道用地白井駅付近をみてみます。同駅ホームのまわりには広大な空き地がありますが、このうちホーム北側にあるものは国道464号専用部の敷地であり鉄道の敷設に使用することはできません。一方、ホーム南側に千葉県営鉄道北千葉線の予定敷地があり、こちらを活用することになります。
白井駅付近の鉄道用地新鎌ヶ谷駅付近とともに用地買収が問題になりそうなのは小室駅東方です。この部分では鉄道用地が千葉県営鉄道北千葉線の複線分しか確保されておらず、鉄道を複々線化するには追加の用地買収が必要となります。
幸い、この周辺は田畑が広がり人家はそれほど多くありません。しかし、このような場所ですら用地買収が難航してきた歴史があるのが千葉県。国道464号専用部の建設が具体化する前に複々線化の計画を進めなければ、手遅れになってしまうことも想定されます。
小室駅東方の鉄道用地小室~千葉ニュータウン中央間の丘陵地帯付近より鉄道用地は再び複々線幅となります。千葉ニュータウン中央駅付近では北総線ホームの横に広大な空き地があり、これが成田新幹線千葉ニュータウン駅の予定地でした。成田新幹線の用地を活用することで、民有地の用地買収を避けて複々線化を施工することが可能となるでしょう。
千葉ニュータウン中央駅付近の鉄道用地用地が問題になりそうな箇所として、印西牧の原駅の車庫線分岐部付近も挙げたいと思います。車庫線の高架橋と国道464号専用部の間には線路1本分のスペースしかなく、車庫線の南側に線路を増設するには車庫線の高架橋を移設する必要があります。おそらく、車庫への入出庫をいったん仮高架橋に切り替える大工事とならざるを得ないでしょう。
印西牧の原駅付近の鉄道用地どのような配線となるのか
このように、概ね新鎌ヶ谷~印旛日本医大間にわたって複々線分の用地はあるものの、一部で追加の用地買収が必要となったり既存設備との兼ね合いで線増に制約がありそうな箇所があります。どのような配線が採用されるのでしょうか。
現状の配線 まず考えたのが、線路別複々線です。車庫線の高架橋を改築しない前提ですと、車庫線の南側には線路1本分のスペースしかないため、北総線の北側にスカイライナー用新線を設ける案です。しかし、複々線の始終端で上下線が交差する必要があり、特に列車本数の多い新鎌ヶ谷駅付近は立体交差とせざるを得ず事業費および事業期間が増大する可能性が高いです。
線路別複々線配線例 困っていたところ、「車庫線と北総線との平面交差を許容すれば方向別複々線にできるのでは?」とX上にてご指摘いただきました。このアイデアをもとに作ってみた図が下となります。車庫線の入出庫時に北総線上り線と平面交差するものの、スカイライナーの走行する線路では立体交差も平面交差もなく事業費・工期面でメリットが大きいと思います。また、西白井駅付近で複々線を開始することで新鎌ヶ谷駅~西白井間で既存の高架橋とアンダーパスを再利用できます。各駅の細かい配線がこの図の通りとなるとは限りませんが、外側をスカイライナー用線路とする方向別複々線となる可能性が高いということは言えるでしょう。
線路別複々線配線例 成田空港線の複々線化計画は「検討を開始」する段階であり、実現までには相当の期間がかかるものと思われます。今後もこの計画の行方を見守っていきたいと思います。
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