【違和感】八高線高麗川駅のホームの秘密

【違和感】八高線高麗川駅のホームの秘密

はじめに

突然ですが問題です。アイキャッチ画像は八高線高麗川駅の写真です。これを見て、違和感に気づけますでしょうか?

高麗川駅のホーム

八高線配線略図(抜粋)
八高線配線略図(抜粋)

高麗川駅は八高線と川越線が接続する駅です。2面3線のホームがあり、うち外側の1番線・3番線を八高線~川越線直通の電車列車が、内側の2番線を八高線の気動車列車が使用しています。このほか留置線(かつての貨物列車用副本線)が数本あります。

2番線を発着する気動車
2番線を発着する気動車
3番線と留置線
3番線と留置線

2番線と3番線は島式ホームなので、八高線のキハ110系ディーゼルカーと八高線・川越線直通の電車列車が対面乗り換えできることになります。

……でもこれ、おかしくありませんか?

電車と気動車の対面乗り換え
電車と気動車の対面乗り換え

ホーム高さと車両のステップ

以前の記事で、異なるプラットホーム高さと車両運用の関係についてご説明しました。旧国鉄の駅のプラットホームの規格には920mm、1100mmの2種類(1966年以前はこれらと760mmの3種類)があり、現在でも全国のJRの駅のホームはこれら3種類の高さが混在しています。一方、車両側も床面高さ1180mmのE231系などから床面高さ950mmのE721系低床車、高さ970mmのステップのついたキハ110系などがあり、走行線区のプラットホームの高さに応じて運用の制約を受けています。

ホーム高さステップのない車両低床車・ステップ付き車両
760mm原則客扱いしない客扱い可
920mm客扱い可客扱い可
1100mm客扱い可逆段差ができる場合は原則客扱いしない

八高線も例にもれず、高麗川より南の電化区間ではホーム高さ1100mmである一方、北側には高さ760mmのホームが残っている駅もあります。このため非電化区間では高さ970mmのステップを備えたキハ110系が運用されています。

八高線児玉駅
八高線児玉駅の高さ760mmのホーム

ここで問題となるのが境界となる高麗川駅です。床面高さ1180mmの電車とステップ高さ970mmの気動車が乗り入れる以上、上の表のとおりにすればホーム高さは920mmとなり、電車列車が発着する際にはホームと電車の床の間に段差ができるはずです。ところが、上の画像を見ると、どちらの車両にも段差など存在しないではありませんか……。

電車と気動車の対面乗り換え(再掲)
電車と気動車の対面乗り換え(再掲)
キハ110系のステップとホーム
キハ110系のステップとホーム

こういう例が全くないわけではありません。例えば両毛線とわたらせ渓谷鐡道の桐生駅では、島式ホームの片側が高さ1100mm、反対側が920mmとなっています。これによりステップのあるわたらせ渓谷鐡道の気動車と通常の電車が対面乗り換えできていますが、ホームの中央部には高さ180mm分の段差ができてしまっています。八高線でも、北側の終点である高崎駅はそのような構造になっています。しかし、高麗川駅にはそのような段差は見当たりません。

両毛線桐生駅
両毛線桐生駅
高崎線高崎駅
高崎線高崎駅

電車と気動車の対面乗り換えが可能な理由

この謎があまりにも気になってしまったので現地に行ってみることにしました。結論からいうと、気動車が発着する2番線のみ、線路が嵩上げされており見かけのホーム高さが低くなっていました。こちらの画像が分かりやすいと思います。

1番線と2番線の列車
1番線と2番線の列車

左が1番線を発車するE231系電車、右が2番線に停車中のキハ110系ディーゼルカーです。ちょうど2つの車両が同じ位置に並んだところでシャッターを切りました。

全体的にやや気動車が上側にあるように見えます。連結器の高さは全国のJRで共通のはずなのでそこに線を引いて比べてみると、やはり2番線に停まっている車両の方が若干高い位置にありそうです。そういわれてみると、レール自体も2番線のほうがすこし目線に近い位置に盛り上がっているようにも見えてきたり……。

1番線と2番線の列車
1番線と2番線の列車

ちなみに、ホームには下写真(これは1番線のものです)のように高さが記載されたプレートがついています。1番線には1100mmと書いてありましたが、2番線の方は「1100mm」と書いた後に雑に消されたようなプレートが設置されていました(写真を撮り忘れました……)。キハ110系のステップがちょうどホーム高さに合っているのを見ると、2番線の見かけのホーム高さは約920mmとなっているのではないかと思います。

1番線のホームのプレート
1番線のホームのプレート

2番線の線路は、ホームに面している部分の前後にゆるい勾配が挿入されており周辺の線路との高低差を生んでいるようでした。しかし、あまりにも勾配がゆるいので目視ではよく分かりませんでした。

ホーム上にも、ホームと電車の間にも段差を作らないために生まれた「線路の高さを変えてしまう」という方式。他に例がないわけでもないようです。

大曲駅の例

奥羽本線配線略図(抜粋)
奥羽本線配線略図(抜粋)

大曲駅は奥羽本線と田沢湖線が接続する駅です。奥羽本線の普通列車の車両は軌間1067mmの701系電車で、客用扉にはステップがついています。一方で田沢湖線普通列車用の701系5000番代と秋田新幹線用のE3系にはステップはついていません。そのため、両者が対面で接続する2・3番線ホーム付近では田沢湖線の標準軌線路が奥羽本線の狭軌線路より低い位置に敷設されており、段差のない乗り換えを実現しています。

奥羽本線・田沢湖線大曲駅
奥羽本線・田沢湖線大曲駅

間にホームがあるので少々分かりにくいですが、右の奥羽本線普通列車の701系狭軌車はステンレス車体の裾よりホームが低く床下が少し見えていますが、左の田沢湖線の701系5000番代は床下が隠れているのがお分かりいただけるでしょうか。このようななかなか気づきにくい工夫も、バリアフリー化の進展とともに増えていくかもしれません。

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