はじめに
JR旅客会社各社の車両動向は、編成表などの書籍や鉄道雑誌の特集などで公になっています。これは特に鉄道会社に公表の義務があるものではないと思いますが、旧国鉄時代の慣例を引き継いで行なわれているものです。かつてはJR貨物も車両動向を公表していましたが、2010年4月1日現在を最後に形式ごとの車両数の公表を停止しました(ただし、在籍機関車の一覧のみ貨物時刻表に掲載されている)。このため、2010年以降の貨車の車両動向の研究には多大な困難があります。
本記事では、各種公開情報をもとにJR貨物の2022年4月1日現在の形式ごとの貨車両数を推測します。なお、記事の性質上、不正確な情報が含まれる可能性が高いことを予めご了承ください。お気づきの点がありましたら、Twitter、メールまたはページ下部のフォームにてお知らせいただけますと幸いです。使用した公開情報は下記のとおりです。
これらの資料は相互に値が矛盾していることもあり鵜呑みにすることができません。例えば「鉄道車両等生産動態統計調査」は車両メーカーからの報告をもとに集計されている一方で「鉄道統計年報」の両数は鉄道会社の報告に基づくので、特に車両の納車が年度の変わり目になったときに「どの時点で引き渡された/売上が発生したのか」の見解の相違により値がずれることがあるようです。また、特に私有貨車の両数は鉄道統計年報・会社概要ページとも年度によってはほとんど出鱈目な数字になっているようです。
本記事の執筆にあたり、各地の貨物列車に連結されている貨車の車両番号を報告していただいている皆様の投稿を多数活用させていただきました。特にRailf.jp鉄道ニュース様、2nd-train様、川崎界隈貨物事情様には大変お世話になりました。この場をお借りして深くお礼申し上げます。
コンテナ車の車両動向
凡例 太字:確定値 斜字:推測形式 | 2010年4月1日現在 | 2021年4月1日現在 | 2022年4月1日現在 |
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コキ71 | 8 | 0 | 0 |
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コキ72 | 1 | 1? | 0 |
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コキ73 | 0 | 1? | 1? |
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コキ100 | 132 | 122~128? | 110~126? |
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コキ101 | 132 | 122~128? | 110~126? |
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コキ102 | 230 | 212~218? | 200~216? |
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コキ103 | 230 | 212~218? | 200~216? |
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コキ104 | 2931 | 2912? | 2911? |
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コキ105 | 80 | 80 | 80 |
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コキ106 | 1159 | 1147~1148? | 1146~1147? |
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コキ107 | 245 | 2162? | 2162? |
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コキ110 | 5 | 5 | 5 |
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コキ200 | 153 | 144~151? | 144~151? |
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コキ5500 | 1 | 0~1? | 0~1? |
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コキ50000 | 2726 | 0? | 0? |
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合計 | 8033 | 7140 | 7110 |
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2010年4月1日現在では、コキ100系各形式のほかコキ71形、コキ72形、コキ200形、コキ5500形、コキ50000形が在籍していました。コキ71形は2020年11月から12月にかけて解体、コキ72形は2021年8月に解体されました。コキ5500形は2010年時点で既に運用を終了しており、少なくとも宇都宮貨物ターミナル駅、稲沢駅に現車が保管されていました。このうち宇都宮タ駅のコキ28478は2006年2月に廃車手続き済み(現在は那珂川清流鉄道で保存)のため2010年時点で残っている1両は稲沢のコキ26714ではないかと思います。現在も少なくとも東側の車両番号が書き換えられて稲沢駅構内に静態保存されており、廃車となったかどうかは不明です。コキ50000形は2017年3月ダイヤ改正で全車が運用を離脱し、JR貨物安全報告書2020によれば2018年度末までに廃車になったとされています。
一方、海上コンテナ輸送用の低床コンテナ車であるコキ73形が登場しています。ただし、コキ73形は製造時のゴタゴタもありどの車両がいつ入籍したのかよく分かりません。車籍編入の時期の手がかりになりそうな情報は下記のとおりです。本記事では検査標記に従いコキ73-2が2019年2月、その他が2022年12月に入籍したとしました。
- 現車の検査標記はコキ73-1が2016年1月→2022年12月の公式試運転時に2022年12月に変更、コキ73-2は2019年2月、コキ73-3,4は2022年12月
- 現車の製造銘板は、コキ73-2は2016年
- 鉄道車両等生産動態統計調査は2020年度にコキ73形全4両の製造をまとめて計上
- JR貨物ダイヤ改正プレスリリース等には2023年現在に至るまで製造両数が計上されていません
- 2022年12月に4両全車を連結した試運転が行なわれていることから、遅くともこの時点で4両全車が車籍編入されたものとみられます
コキ100系・200形については、2010年4月1日現在でコキ100系5144両、コキ200形153両が在籍していました。
これらのコンテナ車の両数を把握する手がかりとして、まず鉄道事故報告書や目撃情報より、2010年4月1日以降、コキ100系少なくとも38両、コキ200形少なくとも2両の事故廃車が発生しています。また、老朽廃車については2023年4月までにコキ100・101形36両、コキ102・103形8両の廃車回送または解体が目撃されています。これらの詳細については後述します。さらに、コキ200形ではコキ200-1がJR貨物中央研修センターで保管(車籍の有無は不明)されています。
さらに、コキ104形は2023年5月の東京貨物ターミナル駅公開にて2911両しか在籍していないことが明らかにされました。2010年4月の在籍両数から把握している事故廃車を単純に引くと2924両で、把握していない事故廃車や老朽廃車が13両あることになります。また、JR貨物2023年3月期決算説明資料に、コキ106・107形などが対象とされているオイルダンパ取替の対象が3,314両であるという記述があります。コキ106形と車体構造が同じコキ110形5両も対象になっていると思われ、取替工事進行中の2021年12月に脱線した「コキ106-407」が対象両数に含まれているかどうかにもよりますが、コキ106形・107形・110形に把握していない事故廃車が2-3両あると考えられます。
コキ100~105形、コキ200形については、運用が限定されており現車の運用状況を追跡しています。コキ100・101形は52ユニット、コキ102・103形は90ユニット、コキ200形は144両で2022年4月1日以降の本線運転が確認されています。この他に、コキ100・101形は3ユニット、コキ102・103形は1ユニットで2021年4月1日以降2022年3月31日以前の本線運転が確認されています。
コキ100系・200形の事故廃車一覧
現時点で把握している限り、下記の車両が廃車となっていると思われます。
形式 | 廃車 |
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コキ100・101 | 事故廃車の情報なし |
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コキ102・103 | 計20両 |
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コキ104 | - コキ104-35,771,2464,2612:2012年2月の脱線事故にて被災後、目撃情報なし
- コキ104-1744:2021年5月の衝突事故にて被災後、目撃情報なし
- このほか、『東日本大震災からの軌跡 : 復旧・復興に「鉄道魂」を結集!』(日本貨物鉄道東北支社)によると八戸臨海鉄道北沼駅でコキ104形2両の廃車が発生しています。
計7両 |
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コキ105 | 事故廃車の情報なし |
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コキ106 | - コキ106-91:2012年9月の脱線事故にて被災後、目撃情報なし
- コキ106-148,570,779:2015年5月の脱線事故にて被災後、目撃情報なし
- コキ106-407:2021年12月の脱線事故にて被災後、目撃情報なし
- このほか、『東日本大震災からの軌跡 : 復旧・復興に「鉄道魂」を結集!』(日本貨物鉄道東北支社)によると仙台臨海鉄道仙台港駅でコキ106-1120ほか5両の廃車が発生しています。
計10両 |
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コキ107 | 計1両 |
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コキ110 | 事故廃車の情報なし |
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コキ200 | - コキ200-48,83:2011年3月の脱線事故にて被災後、目撃情報なし
- このほか、数両が除籍されているという噂があるが両数に含めていない
計2両 |
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コキ100系の老朽廃車一覧
コキ100系については、少なくともコキ100~103の各形式で廃車が進行しています(前述の通り、コキ104形も老朽廃車が出ていると思われます)。老朽化に加え、ユニット車であるコキ100~103は4両中1両でも不具合が起こると4両全車が運用を離脱してしまい、運用効率が悪いという問題を抱えているそうです。
下記は、現在までに廃車回送または解体が目撃されている車両の一覧です。
形式 | 廃車 |
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コキ100・101 | - コキ100/101-77,78:2019年3月廃車回送
- コキ100/101-113,114:2019年10月解体
- コキ100/101-5,6:2022年3月廃車回送
- コキ100/101-49,50:2022年9月解体
- コキ100/101-63,64:2022年9月解体
- コキ100/101-1,2:2022年9月廃車回送、2023年2月解体
- コキ100/101-127,128:2023年2月解体
- コキ100/101-125,126:2023年2月廃車回送
コキ100/101-87,88:2023年3月廃車回送(2023年8月24日削除)- コキ100/101-83,84:2023年3月廃車回送
- コキ100/101-31,32:2023年11月廃車回送(2023年11月11日追記)
計40両 |
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コキ102・103 | 計8両 |
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上記のほかにもご存じの方がいらっしゃいましたらご連絡いただけますと幸いです。
(2023年8月16日本章全面加筆修正)
その他のJR所有貨車
その他のJR所有貨車については、両数が少ないことからかなり確度の高い推定が可能です。
凡例 太字:確定値 斜字:推測形式 | 2010年4月1日現在 | 2021年4月1日現在 | 2022年4月1日現在 |
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ワム80000 | 401 | 0 | 0 |
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トキ25000(国鉄) | 12 | 0? | 0? |
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トラ45000 | 27 | 0? | 0? |
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チ1000 | 5 | 0 | 0 |
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チサ9000 | 1 | 1? | 1? |
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チキ5200 | 2 | 0? | 0? |
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チキ5500(国鉄) | 15 | 0? | 0? |
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チキ6000 | 31 | 24 | 22? |
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チキ7000 | 10 | 10 | 10 |
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シキ180 | 1 | 0 | 0 |
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シキ550 | 3 | 0 | 0 |
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シキ850 | 0 | 1 | 1 |
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シキ1000 | 3 | 3 | 0 |
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ヨ8000 | 22 | 14 | 14? |
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合計 | 533 | 53 | 48 |
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ワム80000形が形式消滅したことが初めて明らかになりました(誰もがうすうす感づいていたことだとは思いますが……)。チ1000形、シキ180形、シキ550形、シキ1000形も形式消滅したほか、トキ25000形(国鉄)、トラ45000形、チサ9000形、チキ5200形、チキ5500形(国鉄)もJR貨物で形式消滅した可能性があります。
統計に掲載されている車両数の分析
推測に使用した統計数値は下記のとおりです。
年月日 | 鉄道統計年報(私有貨車も含む両数) | JR貨物会社情報 |
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有蓋貨車 | 無蓋貨車 | その他 | コンテナ車以外 |
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2010/4/1 | 401 | 136* | 22 | 533 |
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2011/4/1 | 401 | 136* | 22 | 533 |
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2012/4/1 | 87 | 124 | 36* | 215 |
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2013/4/1 | 15 | 112 | 36* | 122 |
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2014/4/1 | 9 | 96 | 36* | 102 |
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2015/4/1 | 9 | 53 | 17 | 79 |
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2016/4/1 | 0 | 74 | 28* | 67 |
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2017/4/1 | 0 | 89 | 26* | 65 |
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2018/4/1 | 0 | 89 | 26* | 65 |
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2019/4/1 | 0 | 94 | 26* | 66 |
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2020/4/1 | 0 | 87 | 24* | 66 |
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2021/4/1 | 0 | 77 | 24* | 53 |
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2022/4/1 | 未発表 | 48 |
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以下、この数値を分析していきます。
2010年4月1日現在の鉄道統計年報の両数と当時の形式ごとの両数を比較すると、有蓋車(ワム80000形)は有蓋貨車、無蓋車(トキ25000形(国鉄)など)、長物車(チキ6000形など)、大物車(シキ850形など)は無蓋貨車、車掌車(ヨ8000形)はその他に分類されているようです。ただこの分類は不安定で、大物車は年度ごとに無蓋貨車とその他のいずれかに計上されており、上表では各年度ごとに大物車が計上されていると思われる分類を*で示しました。また、2014年~2016年に一時的に無蓋貨車が減少している理由は不明で、廃車両数を重複計上している可能性もありますがよく分かりません。
有蓋貨車の2010年4月1日時点での両数は401両で、これはワム80000形の当時の在籍両数と一致しています。有蓋貨車の両数は年々減少し2016年4月1日に0両となっており、ワム80000形は2016年4月1日までにJR貨物から形式消滅したものと考えられます。
鉄道統計年報の無蓋貨車の両数の内訳と増減の理由を推測すると次のようになります。前述のとおり2014~2016年にかけて数値の解釈が不能となっており、2019年も原因不明の増加がありますが、2017年4月1日から2021年4月1日までの間は無蓋車、長物車には本記事で判明している12両以外の廃車は出ていないと推測できます。
年月日 | 鉄道統計年報 | 私有貨車 | 本記事の推測 |
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無蓋貨車 | トキ25000(JRF) | チキ5500(JRF) | JR貨物所有車 | 増減 | 理由 |
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2010/4/1 | 136* | 12 | 6 | 118 | - | |
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2011/4/1 | 136* | 12 | 6 | 118 | 0 | |
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2012/4/1 | 124 | 12 | 12 | 100 | -18 | 大物車分類変更(-15) 廃車(-3) |
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2013/4/1 | 112 | 12 | 21 | 79 | -21 | 廃車(-21) |
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2014/4/1 | 96 | 12 | 24 | 60 | -19 | 解釈不能 |
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2015/4/1 | 53 | 12 | 27 | 14 | -46 | 解釈不能 |
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2016/4/1 | 74 | 12 | 30 | 32 | +18 | 解釈不能 |
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2017/4/1 | 89 | 12 | 30 | 47 | +15 | 解釈不能 |
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2018/4/1 | 89 | 12 | 30 | 47 | 0 | |
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2019/4/1 | 94 | 12 | 30 | 52 | +5 | 不明(+5) |
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2020/4/1 | 87 | 12 | 30 | 45 | -7 | 不明(-5) チキ6395、チキ6396廃車(-2) |
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2021/4/1 | 77 | 12 | 30 | 35 | -10 | チキ1000形5両、チキ6000形5両廃車(-10) |
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また、鉄道統計年報の各年の「その他」の両数の増減は下記のとおり説明できます。これによりヨ8000形の年度ごとの廃車両数、特に2017年4月1日から2021年4月1日までの間ヨ8000形の廃車が発生していないことが分かります。
年月日 | 鉄道統計年報 | 本記事の推測 |
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両数 | 増減 | 理由 |
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2010/4/1 | 22 | - | |
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2011/4/1 | 22 | 0 | |
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2012/4/1 | 36* | +14 | 大物車分類変更(+15)、ヨ8000形廃車(-1) |
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2013/4/1 | 36* | 0 | |
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2014/4/1 | 36* | 0 | |
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2015/4/1 | 17 | -19 | 大物車分類変更?(-15)、ヨ8000形廃車(-4) |
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2016/4/1 | 28* | +11 | 大物車分類変更?(+12)、ヨ8000形廃車(-1) |
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2017/4/1 | 26* | -2 | ヨ8000形廃車(-2) |
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2018/4/1 | 26* | 0 | |
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2019/4/1 | 26* | 0 | |
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2020/4/1 | 24* | -2 | シキ180形・シキ800形廃車(-2) |
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2021/4/1 | 24* | 0 | |
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JR貨物会社情報の「その他」(コンテナ車以外)の両数は次のように解釈できます。
年月日 | JR貨物会社情報 | 本記事の推測 |
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コンテナ車以外 | 増減 | 理由 |
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2010/4/1 | 533 | - | |
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2011/4/1 | 533 | 0 | |
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2012/4/1 | 215 | -318 | ワム80000形廃車(-314) 無蓋貨車廃車(-3) ヨ8000形廃車(-1) |
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2013/4/1 | 122 | -93 | ワム80000形廃車(-72) 無蓋貨車廃車(-21) |
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2014/4/1 | 102 | -20 | ワム80000形廃車(-6) 無蓋貨車廃車?(-14) |
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2015/4/1 | 79 | -23 | ヨ8000形廃車(-4) 不明(-19) |
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2016/4/1 | 67 | -12 | ワム80000形廃車(-9) シキ550形廃車(-3) ヨ8000形廃車(-1) 不明(+1) |
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2017/4/1 | 65 | -2 | ヨ8000形廃車(-2) |
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2018/4/1 | 65 | 0 | |
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2019/4/1 | 66 | +1 | シキ850形移籍(+1) |
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2020/4/1 | 66 | 0 | チキ6395、チキ6396廃車(-2) シキ180形廃車(-1) 不明(+3) |
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2021/4/1 | 53 | -13 | チキ1000形5両、チキ6000形5両廃車(-10) 不明(-3) |
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2022/4/1 | 48 | -5 | シキ1000形廃車(-3) 不明(-2) |
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ところどころ不明な数字の増減や年度間際の廃車の反映忘れと思われる増減があるものの、おおむね2017年4月1日以降の廃車は追えているだろうと思います。もちろん、以上はすべて各年の数字が(概ね)正しいと仮定したときの推測ですので、各年の数字に誤りがある場合は現実の車両動向を反映していない可能性もあります。
以下、各形式ごとに残存している車両を解説していきます。
有蓋車
2010年時点でワム80000形401両が在籍し、紙製品輸送に使用されていました。これらは2012年のダイヤ改正で運用を終了し、その後2016年4月1日時点で鉄道統計年報に有蓋貨車の計上がなくなりました。安治川口駅、稲沢駅、伏木駅など各地の貨物駅には現車が残存していますが、これらは全て車籍がないことになります。
なお、旅客会社でもJR東日本のワム80000形が2020年1月に廃車されており、ワム80000形はJR各社で形式消滅、さらに「有蓋車」に分類されている貨車もJR各社からすべて消滅したことになります。
無蓋車
2010年時点でトキ25000形(国鉄)、トラ45000形が少数在籍し、自衛隊機材輸送や事業用品の輸送に使用されていましたが、自衛隊機材輸送の縮小・コンテナ化、事業用無蓋コンテナのZM8A形などの増備に伴い運用を終了しています。ここ数年で目撃情報もなく、また統計数値から逆算すると後述するチサ9000形の車籍が残っている場合、トキ25000形(国鉄)、トラ45000形はJR貨物で形式消滅した計算になります。なお、旅客会社ではJR四国にトラ152462が在籍しており、これがJR各社で最後の無蓋車および営業用2軸貨車となった可能性があります。
長物車
2010年時点でチ1000形、チサ9000形、チキ5200形、チキ5500形(国鉄)、チキ6000形、チキ7000形が在籍していました。
チ1000形は2021年3月に全車廃車回送されました。JR東日本所属車も2021年5月までに全車廃車・譲渡されており、JR各社から形式消滅したとみられます。
チサ9000形はトラックのピギーバック輸送のための貨車として製造(改造)されましたが、試験終了後運用につくことはなく広島車両所で長期留置されています。2023年5月時点でも現車がレールに載った状態で保管されており、車籍も残っている可能性があります。一方、チキ5200形、チキ5500形(国鉄)は過去数年間貨物会社所属車両の本線走行が目撃されていません。統計数値から逆算するとチサ9000形の車籍が残っている場合、チキ5200形、チキ5500形(国鉄)はJR貨物で形式消滅した計算になります。
チキ6000形は2010年4月1日現在31両が在籍していましたが、チキ6395、チキ6396は2020年3月に解体、チキ6108、チキ6115、チキ6136、チキ6165、チキ6403は2021年3月に廃車回送されました。近年目撃があるのは下記の24両です。
チキ7000形は、2023年現在も10両全車が健在です。
以上より、2021年4月1日現在の無蓋貨車の在籍両数77両の内訳は、チキ6000形24両、チキ7000形10両、トキ25000形(JRF)12両、チキ5500形(JRF)30両、チサ9000形と思われる1両であると推測できます。その後、2021年から2022年にかけてのJR所有貨車の減少5両のうち、後述する通り解体されたシキ1000形の3両を除いた2両はチキ6000形の近年目撃がない車であると推測でき、2022年4月1日現在のチキ6000形の在籍両数は22両であると推測できます。
大物車
2010年4月1日現在、シキ180形1両、シキ550形3両、シキ1000形3両が在籍していました(私有貨車を除く)。
シキ180形は2020年3月、シキ550形は2016年2月、シキ1000形は2022年3月にそれぞれ解体が確認され、いずれも形式消滅しました。一方、シキ850形1両が2018年度に日本通運の私有貨車からJR貨物所有車に移籍したため、JR貨物所有の大物車は1両となります。
また、後述するとおり私有貨車の大物車が2021年4月時点で6両存在します。
車掌車
2010年4月1日時点でヨ8000形22両のみが在籍しており、近年は下記の14両が目撃されています。トラ45000形が全廃されている場合、ヨ8000形はJR貨物で最後の2軸貨車であることになります。
2010年4月1日時点で在籍していたと思われ、近年目撃されていない車は次のとおりです(2008年を最後に目撃のない車もありますが、2008年4月1日から2010年4月1日までの間ヨ8000形の廃車は発生していません)。
このほか、ヨ8639(緑色塗装車)も近年までレールに載った状態で保管されていましたが、本線走行が目撃されておらず車籍はなかった可能性が高いです。(2023年8月15日追記)
以上より、2021年4月1日の鉄道統計年報の「その他」の両数24両の内訳はシキ1000形3両、シキ850形1両、後述する私有の大物車6両、ヨ8000形14両となります。なお、前述のとおりシキ1000形は2022年3月に解体されています。
私有貨車
私有貨車の両数については、特にタンク車・ホッパ車で鉄道統計年報・JR貨物会社情報ページ共にほとんど出鱈目な両数が掲載されており、分析が困難です。本記事では、書籍の情報や過去1年間の現車の目撃情報をもとに両数を推測しました。
凡例 太字:確定値 斜字:推測 **:タキ1900形、ホキ1000形の両数は2021年8月31日現在形式 | 2010年4月1日現在 | 2021年4月1日現在 | 2022年4月1日現在 |
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タキ1000 | 901 | 938 | 958? |
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タキ1200 | 0 | 20 | 20 |
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タキ1900 | 222 | 95** | 86~95? |
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タキ43000 | 603 | 395 | 364~368? |
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タキ44000 | 68 | 10 | 8 |
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その他タンク車 | 421 | 0? | 0? |
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ホキ1000 | 34 | 14** | ~14? |
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ホキ1100 | 0 | 34 | 34 |
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ホキ2000 | 0 | 27 | 36 |
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ホキ5700 | 27 | 0 | 0 |
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ホキ9500 | 45 | 17~? | 16~? |
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ホキ10000 | 241 | 0 | 0 |
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トキ25000(JRF) | 12 | 12 | 0~1? |
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チキ5500(JRF) | 6 | 30 | 30 |
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シム1 | 4 | 4? | 4? |
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シキ610 | 1 | 1 | 1 |
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シキ800 | 2 | 1 | 1 |
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シキ850 | 1 | 0 | 0 |
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鉄道統計年報掲載のタンク車、ホッパ車の両数、JR貨物会社情報掲載の私有貨車の両数は次のとおりです。
年月日 | 鉄道統計年報 | JR貨物会社情報 |
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タンク車 | ホッパ車 | 私有貨車 |
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2010/4/1 | 2215 | 347 | 2588 |
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2011/4/1 | 2095 | 317 | 2438 |
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2012/4/1 | 2040 | 347 | 2419 |
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2013/4/1 | 1654 | 224 | 1919 |
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2014/4/1 | 1652 | 236 | 1940 |
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2015/4/1 | 1611 | 236 | 1869 |
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2016/4/1 | 1591 | 240 | 1883 |
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2017/4/1 | 1929 | 337 | 1883 |
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2018/4/1 | 1895 | 332 | 1883 |
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2019/4/1 | 1895 | 338 | 1871 |
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2020/4/1 | 1854 | 344 | 2246 |
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2021/4/1 | 1850 | 209 | 2107 |
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2022/4/1 | 未発表 | 1728 |
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2010年時点での両数は、公表されている形式ごとの両数に合致します。ところが、2014年以降、鉄道統計年報とJR貨物会社情報の間で数値が合わなくなります。また、鉄道統計年報は2016年と2017年の間、会社情報では2019年と2020年の間で数百両単位の大幅な両数の増加があるのが分かります。これに対応するような大量増備された私有貨車の形式は思いつきませんし、鉄道車両等生産動態統計調査にもそのような貨車の大量増備は計上されていません。この原因としては日本石油輸送と日本オイルターミナルとの間でリースや第三者使用で貸し借りしているタンク車を二重計上している可能性や一部の私有コンテナを貨車として数えている可能性など色々考えられますがよく分かりません。
ただ、全くの出鱈目ではないようです。2018年以降のホッパ車両数の増減はそれぞれ下のように説明することができ、両数の増減に関してはある程度正確な情報を反映している可能性があります。
年月日 | ホッパ車両数 | 増減 | 理由 |
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2018/4/1 | 332# | - | |
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2019/4/1 | 338# | 6 | ホキ1100形新製(+6) |
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2020/4/1 | 344# | 6 | ホキ1100形新製(+6) |
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2021/4/1 | 209# | -135 | ホキ1100形新製(+10)、ホキ10000形廃車(-145) |
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ともかく、統計の数字が信用できない以上、本記事では石油タンク車については書籍掲載の在籍車両数、その他の私有貨車については目撃情報をもとに数字を積み上げる形で両数を推測したいと思います。
石油輸送用タンク車
『新しい貨物列車の世界』によると、2021年4月現在で日本石油輸送、日本オイルターミナル各社の所有するタンク車の両数の合計は次のとおりです(原典書籍には所有者及び番代区分ごとの両数も掲載されているので、興味のある方は購入してみてください)。
形式 | 2021年4月1日現在 |
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タキ1000 | 938 |
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タキ43000 | 395 |
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タキ44000 | 10 |
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その後、2021年12月までにタキ1000-1008までの20両が増備されているので、年度内に事故廃車が発生していなければ2022年4月1日現在のタキ1000形の両数は958両と推測できます(震災廃車ほかで50両が廃車になっている計算になります)。
タキ43000形、タキ44000形については、2022年3月31日以降タキ43000形364両、タキ44000形8両が本線運転しているのが確認されています。タキ43000形、タキ44000形の在籍車両の詳細は別ページに分けましたのでそちらをご覧ください。
石油輸送以外のタンク車
福島臨海鉄道小名浜駅~信越本線安中駅間の亜鉛焼鉱輸送に使用されているタキ1200形は2011年までに20両が製造されています。2023年現在も20両全車が運用に就いています。
三岐鉄道東藤原駅~関西本線四日市駅間のセメント輸送に使用されているタキ1900形は、『新しい貨物列車の世界』によると2021年8月31日現在で95両が在籍していました。直近では少なくとも下記60両が目撃されているほか、2022年秋に計26両のタキ1900形が廃車回送されたという話があり、逆算すると2022年4月1日現在では最低86両が在籍していたということになろうかと思います。
このほか、2010年4月1日時点では化成品輸送用など多数のタンク車が在籍しましたが、いずれも運用を失っておりいずれも廃車・形式消滅されたものと考えられます。なお、安治川口駅構内の関西化成品輸送専用線にタキ14700形タキ14738が留置されていますが、現車の状況から既に廃車になっているものと思われます。
ホッパ車
2010年4月1日時点ではホキ1000形、ホキ9500形、ホキ10000形の3形式が在籍していました。
ホキ1000形は三岐鉄道東藤原駅~衣浦臨海鉄道碧南市駅間で炭酸カルシウム及びフライアッシュの輸送に使用されていましたが、2015年から後継形式であるホキ1100形が合計34両製造されています。ホキ1000形には廃車が出ている模様で、『新しい貨物列車の世界』によると2021年8月31日現在14両が残っているそうです。2023年3月現在は東藤原駅構内にホキ1000-3、11、17、23の4両が留置されており、これ以外の車両については長らく目撃がありません。ホキ1100形は2023年現在も全車が運用に就いています。
ホキ9500形は西濃鉄道乙女坂駅と名古屋臨海鉄道東港駅の間で石灰石輸送に使用されています。こちらも後継車の増備により廃車が発生しているようですが、少なくとも下記17両が2021年4月以降も運用に就いているほか東港駅構内に車籍の有無が不明な大量のホキ9500形が留置されています。
ホキ9500形の置き換えのために製造されているホキ2000形は2022年3月までに36両が製造されています。その後、2022年6月までにホキ2000-45までの9両、さらに2023年4月にホキ2000-50までの5両、2023年5月にホキ2000-54までの4両が車両メーカーを出場しています。
ホキ5700形は、タキ1900形同様セメント輸送に使用されていました。2006年までに運用を終了したものの、2010年時点で27両が在籍していました。近年目撃がないことから全車廃車になったものと考えられます。ホキ10000形は鶴見線扇町駅~秩父鉄道三ヶ尻駅間の石炭輸送に使用されていましたが、2020年2月に運用を終了しました。東京新聞の報道によると、最末期は145両が在籍し、全車解体される予定とのことです。
無蓋車
2010年4月時点では福島臨海鉄道小名浜駅~信越本線安中駅間の亜鉛精鉱輸送に使用されたトキ25000形(JRF)12両が在籍していましたが、輸送需要の消滅に伴い2021年に運用を終了しました。少なくともトップナンバーのトキ25000-1が2022年5月現在小名浜駅の同社専用線内に保管されており、廃車となったかどうか不明です(2024年初めに鉄道統計年報で無蓋貨車の2022年4月現在の両数が公表されれば明らかになるでしょう)。
長物車
鹿児島本線黒崎駅・山陽本線東福山駅発送の長尺レール輸送に使用されるチキ5500形が2010年4月1日時点で6両在籍していました。その後増備され、現在は合計30両が在籍しています。
大物車
2010年4月1日時点ではシム1形4両、シキ610形1両、シキ800形2両、シキ850形1両が在籍していましたが、2020年3月にシキ800形が1両解体され、シキ850形はJR貨物に移籍しましたので、現在はシム1形4両、シキ610形1両、シキ800形1両の計6両が残っていることになります。
なお、シム1形4両は2017年の検査回送を最後に本線運転が目撃されていませんが、現車は日本車輌製造工場構内に保管されているようです。
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