はじめに
駅の配線を設計するとき、ふつう分岐器はプラットホームの先に設置します。ホームの途中に分岐器を設けると編成の長い列車はその分岐器を使用できませんし、列車の停止位置にも制約が出てしまいます。また、万一ホームに列車が停車している間に分岐器が転換されてしまった場合、脱線事故の原因となります。しかし、用地の制約や歴史的経緯からホームの途中に分岐器が設置されてしまっている駅がいくつかあります。今回はそのなかから3駅ご紹介します。
駅の配線を設計するとき、ふつう分岐器はプラットホームの先に設置します。ホームの途中に分岐器を設けると編成の長い列車はその分岐器を使用できませんし、列車の停止位置にも制約が出てしまいます。また、万一ホームに列車が停車している間に分岐器が転換されてしまった場合、脱線事故の原因となります。しかし、用地の制約や歴史的経緯からホームの途中に分岐器が設置されてしまっている駅がいくつかあります。今回はそのなかから3駅ご紹介します。
まず、西武拝島線・多摩湖線の萩山駅の例です。図下側の3番線から多摩湖線の上り列車が国分寺方面へ出発する際、ホームの途中に設けられた分岐器で転線する必要があります。ホームの長さが10両分に対し多摩湖線は4両編成であり、停止位置が渡り線の手前に設置されているので、運行上大きな問題が起こるわけではありません。しかし、多摩湖線方面への線路が2番線(図中央)の線路と交差するのはプラットホームの端ぎりぎりであり、少なくとも10両編成の列車が2番線に停車中は多摩湖線の列車が通るのは難しいような気がします。
渡り線の手前には、拝島線(8・10両編成)の場内信号機と多摩湖線の出発信号機が仲良く並んで設置されており、これも少し面白いです。
この駅はもともと現在の位置より青梅街道駅側に100m強進んだくらいの場所にあったのを1958年に移転して営業しており、移転当初は車両3~4両分くらいの短いホームが設置されていました。その後、1970年代にホームが延伸された際、多摩湖線青梅街道方面へは現在の1番線のみから発着可能な構造であり、3番線から多摩湖線へ乗り入れることはできませんでした。多摩湖線の列車は萩山駅で行き違いができなかったわけですが、さすがに不便だったのかその後1番線から多摩湖線へ乗り入れられるように線路が追加されて現在に至ります。用地や線形に制約があるなか、工夫をして最小限のコストで配線改良を実現した、という見方もできそうです。
萩山駅は、この反対側(八坂・小川方)も分岐器がたくさんありいい雰囲気です。
三島駅の1番線(図上側)の線路にもホーム途中の分岐器があります。この分岐器は東海道本線と伊豆箱根鉄道駿豆線を結ぶ渡り線の分岐器で、東京方面から修善寺方面に乗り入れる特急「踊り子」が使用しています。
この分岐器を通過するのは大型の特急型車両であり、通過時に車体の裾がホームに衝突しないよう分岐器部分のホームが少し削られています。この写真を撮影した当時、踊り子号は185系(先頭車車体長19.85m)で運転されていましたが、より車体の長いE257系(同21m)の入線にあたりさらにホームを削る工事が行われたようです。
三島駅1番線は、分岐器の東京寄りに踊り子号が発着する以外に定期ダイヤで列車が発着することはありません。このようにホームが一部削られており、その部分に列車が停車した場合旅客の乗降に危険が伴うという理由があるのだと思います。
最後は、ちょっとマニアックな久喜駅の例です。副本線のホームの途中に保守作業用の側線が設置されています。どうしてこのような配線になったのでしょう。よほど場所がなかったのでしょうか……。
蛇足ですが、サイト開設当初の東北本線の配線略図にはこの側線は掲載しておりませんでした。この区間は何回か通ったことがあったのですが、主本線の車窓からは待合室等で見えづらい位置にあり、さらにこんなところに分岐器があるなどと予想もしていないため見逃していたのです。あるとき、たまたま特急列車の退避で副本線に入る列車に乗車した際に分岐器の存在に気づき、とても驚いたのを覚えています。
2022年3月26日追記:この側線は2022年2月までに撤去されたことを確認しました。
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