【2023年3月ダイヤ改正】北越急行・しなの鉄道の最高速度引下げで何が変わるのか?

【2023年3月ダイヤ改正】北越急行・しなの鉄道の最高速度引下げで何が変わるのか?

はじめに

2023年3月ダイヤ改正にて、第三セクター2社の最高速度引き下げが発表されました。北越急行では、ほくほく線の最高速度が95km/hに引き下げられ、最も速い各駅停車の所要時間が49分から56分に伸びました。また、しなの鉄道最高速度を85km/hに引き下げることを発表し、これに伴い軽井沢~篠ノ井間で所要時間が2~3分程度伸びる列車が発生します。本記事では両社のコスト削減施策の詳細を整理したうえで、最高速度の低下にどのような効果があるのか見ていきます。

なお、本記事で紹介する最高速度の引下げは、落石や倒木による脱線を防止する目的で行われているローカル線での低速の徐行運転(いわゆる必殺徐行)とは目的も内容も異なるものです。「必殺徐行」については下記の記事をご覧ください。

北越急行の最高速度低減

改正で廃止される超快速スノーラビット
改正で廃止される超快速スノーラビット
改正で廃止される超快速スノーラビット
超快速の行先表示

北越急行は、JR上越線の六日町駅とJR信越本線の犀潟駅を結ぶほくほく線を運営しています。2015年の北陸新幹線開業まで、同線は首都圏と北陸方面を結ぶ特急列車の短絡ルートでしたが、以後は地域輸送の普通列車が中心となっています。毎年7億円あまりの営業損失を計上しており、補助金のほか特急列車が運行していた時期に蓄えた「貯金」で運行を続けています。

しかし、コロナ禍の影響により赤字幅が拡大しています。2021年3月期の営業損失は9億800万円、22年3月期は9億3700万円となりました。赤字の拡大により「貯金」が底をつくのを少しでも先延ばしにするため、2023年3月ダイヤ改正では減便や全列車の各駅停車化などいくつかの経営合理化が発表されました。

そのなかで、最高速度の引き下げも行なわれることが分かりました。現在、ほくほく線の列車はHK100形電車の最高速度である110km/hで運行されていますが、これを95km/hに低下することが発表されました。最高速度の低下に伴い最速の各駅停車の所要時間は49分から56分に伸び、その他の列車も10分前後所要時間が長くなるようです。

しなの鉄道の線路等級引下げ・最高速度低減

しなの鉄道115系(イメージ)
しなの鉄道115系(イメージ)

長野県で旧信越本線の並行在来線を転換して開業したしなの鉄道も線路等級引下げと最高速度低減を発表しました。しなの鉄道の路線のうち軽井沢~篠ノ井間は最高速度100km/h、長野~妙高高原間は最高速度95km/hでしたが、2023年3月改正で線路等級が引下げられ、最高速度も85km/hに低下することが発表されました(参考。なお、路線の全部なのか一部なのか不明)。その他の取り組みとあわせ、年間7.2億円の経費節減効果があるとされています。

しなの鉄道の路線のうち軽井沢~篠ノ井間は旧国鉄時代の1967年時点で線路等級2級・最高速度100km/h、長野~妙高高原間は線路等級3級・最高速度95km/hでした。その後、軽井沢~篠ノ井間は特急「あさま」の120km/h運転が行なわれるようになったものの三セク化の際の経費削減策で再び最高速度100km/hに引き下げられた経緯があります。現在両区間の線路等級が何級なのか分かりませんが、最高速度85km/hという値を額面通りに受け取れば線路等級が4級線相当まで引き下げられることになります。

最高速度引き下げの効果とは?

最高速度・線路等級引き下げの効果として、しなの鉄道の資料には「設備寿命延伸」「設備基準見直し」などと書いてあります。具体的にどのような効果があるのでしょうか?

まず、線路の歪み・狂いの基準値など軌道整備基準値が緩和されると考えられます。しなの鉄道や北越急行でどのような整備基準になっているか知りませんが、鉄道総研の技術者が2015年に執筆した記事によればJR各社の在来線の整備目標値は大体次のようになっています。これは旧国鉄が1972年に定めた値とほとんど変わっておらず、旧国鉄や鉄建公団建設線を引き継いだ北越急行やしなの鉄道の両社社内基準値も似たようなものだと思います。

線別1級線2級線3級線4級線
軌間+10 -5
水準11121316
高低13141619
通り13141619
鉄道軌道のメンテナンス 古川敦著 SE178号より

このように、例えば最高速度100km/hの2級線から最高速度85km/hの4級線に格下げすることで、水準・高低・通り狂いの基準値が30%以上緩和されることになります。

また、列車の速度を低下させることでレールの歪みの発生や軌道の破壊が抑制される効果も期待できます。旧国鉄鉄道技術研究所の1978年の研究によると、マヤ車の2年間の検測データの分析結果から軌道の高低狂いの進みSは次のように表わされます(界隈で「S式」と呼ばれる有名な式のようです)。

S=4.90×103T0.28V0.92M0.91L0.20P10.27P20.26P30.04

この式でVは列車の平均速度を表わしています。すなわち、軌道の狂いは列車速度(の0.92乗)に比例して速く進むということがお分かりいただけると思います。

このように、路線の最高速度を引き下げることで軌道の整備基準を緩和できるとともに、軌道狂いなどの進行も遅くすることができ、軌道の保守工事や資材の交換の頻度を下げることができると考えられます。

最高速度の引下げによる所要時間の増加は、たしかに旅客サービスの低下には違いありません。しかし、都市間輸送よりも地域輸送のほうが需要の多いローカル線においては、いたずらに運賃を値上げするよりは、たとえ数分程度所要時間が伸びたとしても、最高速度の引下げによるコストカットをする方が結果的に旅客にとって最善の選択肢となる場合もあるのかもしれません。

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